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『 黒川紀章展 』
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「レム・クールハースとの対論に寄せて」
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機械の時代から生命の時代へ
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オンラインブック EACH ONE A HERO-The Philosophy of Symbiosis
「レム・クールハースとの対論に寄せて」
−流行するフォルスリズムの批判−
2006年12月18日
1958年に宣言した「機械の時代から生命の時代へ」という時代のパラダイムシフトは、実は、さまざまな分野の同時平行的なパラダイムシフトと連動している。
その中でも当時の西欧における知の体学(哲学や他のアカデミズムの分野)のパラダイムシフトと強く連動している。
アリストテレスからカント、デカルトに至る二元論、合理主義、純粋主義は20世紀の経済・科学技術の発展に大きく貢献したということはいうまでもないが、他方で、その限界も明らかになった。20世紀前半から始まった二元論、合理主義、形而上学に対する批判は、モダニズムが成立する頃には哲学の主流となっていた。
レヴィストロースの構造主義は、「野生の思考」によって西欧の世界解釈を相対化、構造化した。ソシュールの言語学から生まれた記号論も20世紀の思想的パラダイムとなった。ニーチェは「道徳の条語」の中で「事実などは存在しない、ただ解釈が存在するだけだ。定義することのできるのは、歴史を持たないものだけである。」と述べている。フーコーの役割も大きいが、彼が編みあげる歴史は、反証の余地のない精密を示しながらも、「歴史」とは実はフィクションにすぎないという考え方を見事に伝えている。これはおそらくニーチェの影響だろう。
曖昧性の哲学とも身体性の哲学とも呼ばれているメルロポンティは精神と身体の関係の両義性曖昧性を鋭く指摘した。
これらの哲学、20世紀前半の哲学に共通するのは
1. 西欧・中心主義批判
2. 理性中心主義批判
3. 人間中心主義批判
4. 民族主義批判
5. 純粋主義あるいは形而上学批判
という点である。
これは私が1958年以来展開してきた、機械から生命へ、共生の思想と一致している。
1960年以後この展開はさらに急速に進んで、さまざまな学問分野へと波及した。
これがブルバキの体系から非ブルバギの体系へという転換である。
ブルバギの体系すなわち、ニュートン力学、ユークリット幾何学、ラボアンジェの科学、ダーウィンに代る量子力学、マンデルブロのフラクタル幾何学、マーグリスの共生進化論の登場である。
量子力学の分野では科学的観測という事実もまた無数の事実の偶然の1つにすぎないとするコペンハーゲン解釈をもたらした。更にデービットピートはその著「Bridge between Spirits and Material」(日本語訳シンクロニシティ)の中で、精神と物質は二元的思考では明らかにならないことを説いている。
哲学は情報化社会の進化の中で更に、ポスト構造主義へと突き進んでいる。哲学はもはや統一的なオルタナティブを提示するものでなく、中心のない、普遍性のない、全面的な拡散へと向かっている。
トウルーズ/ガタリ、ロランバルト、デリタ等によるポスト構造主義の哲学はこれを反映している。
建築はその時代の精神的表明であり、思想の表現である。それ故に、建築も又、共生の時代、多様化の時代、拡散の時代を迎えている。
いま建築界にはファッションデザインにも似たフォルマリズム、スタイル、そしてシンボリズが横行している。思想なき建築に未来はない。
唯識思想そしてその発展である共生の思想、メタボリズムの思想の提唱する両義性、中間領域が今、各国で再評価される気運にあるのは、この点にあるのではないか。
2006年12月18日
黒川 紀章
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