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カザフスタン新首都アスタナ計画








カザフスタン新首都の国際コンペ 1998


カザフスタン政府によって実施された新首都の設計についての国際指名コンペに優勝(1等に入賞)したことが1998年10月6日、発表になりました。その概要をお知らせいたします。

1) カザフスタン新首都の国際設計コンペの概要

1、 カザフスタン政府は1997年に現在の首都アルマティからアスタナ(旧名アクモラ)へ首都を移転し、新首都をつくることを決定した。

2、 1998年 4月カザフスタン政府は新首都の設計を広く国際的に活躍する建築家、都市計画家に呼びかけ、国際指名コンペによって建築家を選定することを決定した。

3、 カザフスタン政府は世界で活躍する建築家、都市計画家50人(チーム)を指名し、参加を呼びかけた。

4、 そのうち最終的には27チームがコンペに参加し、新首都の計画案を8月20日までに提出した。

5、 9月16日から応募案の全てが無記名でアスタナの国際会議場のロビーに展示され、9月20日から専門家による審査会が無記名によって開催され、9月30日までに優秀案3案を選定した。

6、 その後、大統領、首相、専門家を含む最終審査会が展示会場内で行われ、10月6日黒川紀章案を第1位として決定し、同日発表された。

7、 授賞式は大統領出席のもと、10月28日に開催される予定である。

2) 新首都計画の概要

国際コンペで求められた新首都計画の条件は次の通り。

1、 フルシチョフの時代に大規模な小麦の生産基地として開発された都市ア クモラ(現在人口30万人)を新首都の位置に選び、そこに2005年に60 万 人、2030年の人口を100万人と想定する新首都を計画する。そこで、新 首都は既存の都市のインフラを利用しながら、隣接する新しい地域に新 都市を計画し、既存都市アクモラを含めて、新首都アスタナ(新名称) を建設するものである。

2、 新首都建設の理由は
イ)、ソ連邦からカザフスタン共和国の独立を意味づけること。
ロ)現在の首都アルマティは中国国境に近く偏在しているので、国の中 央の交通の要衝であるアクモラ(アスタナ)に首都を移転する。
ハ)独立を機に21世紀型の最先端の新首都を建設することによって、世 界にカザフスタンの存在をアピールする。
ニ)新首都は最終的(2030年)には人口100万人の都市を目指し、差し 当たりは2005年(人口60万人)までの5ヶ年計画で空港、道路、 主要公共建築等のインフラを整備する。

3) 黒川紀章案の概要

黒川はこれまで40年間一貫して21世紀をこれまでの「機械の原理の時代 」 に 代わる「生命の原理の時代」と主張してきた。新陳代謝(メタボリズム)、リ サイクル、情報、共生(シンビオシス)は、そのキーワードである。

1、 メタボリック・シティ(成長する都市)の提案 新首都は急速に成長するので、中心に核(コア)をもつ放射状都市構造に代わる新しいリニアゾーニング(帯状土地利用計画)を提案している。 リニアゾーニングは、成長のどの段階でも各都市機能がバランスする。

2、 マスターシステムの提案 従来のマスタープランは最終的な姿を画くことが重視された。 それに対して、黒川案は最終的な姿にこだわるのではなく、21世紀の都市とは何かというマスターシステムを提案し、5年毎に時代の状況を分析、検討して、柔軟にプランを修正していく新しい方法を提案している。

3、 共生都市の提案
イ) 既存都市人口(30万)をできるかぎり保存、再開発しながら、イシ ム川の南側、東側に新都市を展開して歴史と未来の共生都市を提案。
ロ) 川の両側に新住宅クラスターを計画し、川(イシム川)と共生して 住む、自然と共生するリバーシティーを提案。
ハ) 既存都市部では、駅周辺の再開発による新しいビジネス地区レイル シティをつくり、このレイルシティから既存の公園へのびる森の都 心軸を形成し、森と共生する都心を計画する。
ニ) 既存都心部は、あらゆる都市機能(住宅、業務、文化、娯楽、教育、 商業)の混在する新しい発想の共生都市を目指す。
ホ) イシム川の南にビジネスセンター地区(新都市)とガバメントセンター(官庁地区)、キャピトール(大統領府)、ディプロマート地区(大使館シティー)をつくる。 それぞれのビジネスシティー地区(新都心)は三角形(くさび形) の エリアとすることによって、森と相互浸透し、森と共生する都心地 区をつくる。
ヘ) 大統領府(国会議事堂、最高裁、迎賓館、大統領官邸)の建築はアブストラクトシンボリズムの建築(抽象的に伝統を表現する建築)となる。 それは出来る限りシンプルな近代的幾何学形態を使いながらも、それぞれの形態がカザフスタンの歴史的伝統によって意味づけされることを目指している。 すなわち、地域性と世界性の共生する都市・建築を目指している。

4、 防災対策
イ) イシム川の雪どけ水による洪水から守るために、大規模な調整池をつくると共に、新都市のビジネスシティー地区や大統領府はデッキ(人工地盤)あるいは空中庭園(スカイガーデン)で構成され洪水から守られている。
ロ) 住宅地区(クラスター)は環状道路で囲まれており、その環状道路は3メートル地盤面より高い堤防を形成する。 これにより、現状地盤のままで雪どけによる洪水から住宅地を守ることができる。

5、 エコ・シティ(エコ・メディア・シティ)
イ) 新都市の南側には大規模な人工の森を形成し、強風時のダストから都市域を守る。
ロ) 人工の森(エコ・フォレスト)の造成により、21世紀型のエコ産業、バイオテクノロジー、新農業、バイオとマルチメディアの共生によってつくられるエコ・メディア産業を育成する。
ハ) ゴミ発電、雨水リサイクルシステム等21世紀型のリサイクルシステムを導入し、サスティナブルな都市を目指す。

4)実現への道筋(プログラム)

1、 1等当選者は地元建築家チームや専門家と共同で新首都の都市設計及び都心地区、大統領府、官庁街、駅等、主要建築物の設計をすすめることになると思われるが、具体的には今後の打ち合わせによる。

2、 第1期計画は2005年までに都市基盤(インフラ)の整備と駅、空港、住宅、業務中心などの公共施設の計画、第2期計画は民活(外国資本の投資)も含めた都心部や住宅地の建設等が進められることになる。

3、 新首都は2030年に100万都市を目指しているが、段階的に建設されることになる。



都市計画コンセプト

 旧ソ連のフルシチョフの時代に計画された、小麦農業の集散基地としての都市アクモラ(人口約27万人)を歴史的都市として保全しつつ、その南側(イシム川左岸)に新都市をつくり共生させる構想。  イシム川の両岸を新しい住宅地として開発し、川(自然)と共生する都市をつくる。冬季、南西部より秒速平均7mの風が吹くため、それを防ぐためにイシム川の南西部に人口森林をつくる。既存都市の鉄道駅から南へ伸びる都心軸は、イシム川を越えて南へ延伸される。  政府の建物、大統領官邸大統領府、国会議事堂等を配置するためのガバメントシティーは、南側へ伸びる都心軸と直交する形で区域を形成する。  道路は既存都市の放射状のパターンを改良するため、都心環状、中央環状、外管状の各環状道路が計画される。  リニアな都心軸と、細胞型の住宅地のクラスターは、2010年、2020年、2030年と生長する(メタボリズム)都市として機能するよう計画されている。  公園計画は、これまでの近隣住区計画とは異なり、主として河川を中心にリニアなネットワークを形成するよう計画し、それが生態回廊として種の多様性を保全し、人と自然(他の生物)の共生を可能とする。


* The International Cities Award for Ecellence, 2002