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福井県立恐竜博物館リニューアル 増築・大規模改修

2000年に竣工した福井県立恐竜博物館は、開館から20年以上経過し、当初25万人だった年間来館者数は90万人を超える中、さまざまな箇所で施設整備が課題となっていた。
新幹線開通により今後さらなる来館者が期待される中、子どもから高齢者・世界中からの来館者に幅広く楽しんでもらえる施設、また研究・情報発信の拠点として未来に継承していく博物館とするため、増築・大規模改修による機能強化を行った。
そして2023年7月に「REBORN」をテーマに再オープンした。

黒川紀章の建築哲学の継承と展開
恐竜博物館は、共生の思想やアブストラクト・シンボリズムを謳った黒川紀章の代表作であり、黒川哲学の継承と調和の実現が大きな課題であった。既存博物館は、回転楕円体、楕円推形、楕円など世界に共通する美しい形を用いて象徴性を表現し、グローバルとローカルを同時に実現している。例えば回転楕円体はこの勝山の地に置くことで、はじめて恐竜のタマゴに感じられる。博物館の象徴である回転楕円体の相似形を増築棟の中央に配置し、新たなランドマークとした。既存棟の大タマゴが展示ホールなのに対し、増築棟の小タマゴは建物の中心となる縦動線を集約し、賑わいを創出する空間とした。

環境との共生
既存棟は、現況の地形の起伏を積極的に利用した計画である。敷地の高低差の中に建物を沈み込ませ、山に根付き、自然と一体化した建築の姿が表現されている。増築部もこの手法に則り、2層分を山に埋め、アプローチ側からは地上1階と見えるよう高さを抑え、環境と調和した建築とした。大タマゴと小タマゴは屋上緑化された屋根で緩やかに繋がり、周囲の山々と共生しながら、かつやまの森に唯一無二の景色を創出している。

中間領域とフラクタル
フラクタル曲線が用いられた既存ファザードを内部に取り込み、既存と増築を新たなガラスのホワイエで緩やかに繋ぎ、中間領域を設けた。既存の外壁を内部化し、県産材を活用した新たな曲面壁と対比させることで、当時の意匠を再発見する仕組みとした。緩やかに弧を描いたファザードは来館者を受け入れる形状である。既存の楕円庇を生かしたエントランスは明解なアイキャッチとなり、求心力のある意匠を継承している。

*2024年
化石研究体験 キッズデザイン賞 優秀賞(経済産業大臣賞)
福井県立恐竜博物館新館「化石研究体験」 | 優秀賞(経済産業大臣賞) | キッズデザイン賞検索サイト
*2025年
化石研究体験 iF DESIGN AWARD GOLD受賞 
Cultural Exhibitions部門

所在地

福井県勝山市村岡町寺尾地係

主用途

博物館

設計期間

2020年4月- 2021年3月

工事期間

2021年4月- 2023年6月

敷地面積

1,370,000m²

建築面積

15,200㎡(増築:約3,500㎡)

延床面積

25,300m²(増築:約7,000㎡)

構造

RC造 一部SRC造およびS造

規模

地上3階・地下1階、塔屋