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プロジェクト
朝霞荘







Choka-so

所在地:東京都

設計/竣工:1985年‐1987年

建築面積:576.82m²

延床面積:999.28m²

鉄筋コンクリート造 

地下1階 地上2階 塔屋1階

朝霞荘は万葉集「さねかずらの恋」に詠われた名所「逢坂」(市谷付近)の中腹に位置し、江戸時代の地形をそのまま残す閑静な住宅街の一画にあり、周囲の環境に調和するように計画された。用途は保険会社の厚生施設にあてられている。

敷地は前面道路より1.2m下がっている。このレベル差を利用し、各層の屋根を幾重にも重なるように設け、景観に広がりを持たせている。また、建物はRC造であるが、高さをできるだけ低く押え、屋根には1.5%と1.7%のムクリをつけている。庇はRC部を最小の厚さとするほか、木などの化粧庇を使用し、繊細なイメージと和らかさを目指している。

既存樹の楠の大木は、以前のメインアプロ−チに使用されていたスロープを通用口として利用することにより保存した。これは敷地全体にシンボリックな歴史的連続感を与えるものとなった。

駐車場の床( #4) は、障子の組子および、花、鳥、風、月の各パターンを御影石にて表現し、庭の一部としての機能を持たせた。そして上部にアルミキャストの格子を組みこんだ築地塀を設け、塀の内(中庭および玄関露地)と外(駐車場および正門前)との中間領域を形成している。

中庭は、桂離宮の紅葉山の部分の引用で、伊勢砂利で池を、山肌で築山を表現している。そして西側隣地の樹木を借景として、限られた空間に広がりを求めた。ベンガラ色の外壁、築地塀格子の組子の振れ、各室の光天井、あるいは各所の仕上げの一部に金属またはシルバー色を利用しているのは、「侘び」「さび」の中に華やかさの表現をところどころにおりまぜ、異質なものあるいは意外性との共生を表現する花数寄の手法である。