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プロジェクト
日本芸術院美術品収蔵庫

北側外観:桂垣及び椎は当時の意匠を
もとに再現した。


講堂側庭園より望む:右側は日本芸術
院会館


公園側外観:外塀は既存の意匠をもと
に再現した。

所在地   東京都台東区上野公園
主要用途  美術品収蔵庫
設計期間  2013年6月-2014年1月
工事期間  第1期:2014年3月-2015年3月
      第2期:2014年10月-2016年9月
      第3期:2017年-(予定)
敷地面積  3,579.57m²
建築面積  1,131.54m²
延床面積  2,232.09m²(内収蔵庫増築部分 986.11m²)
構造    RC造
規模    地下1階、地上1階
      (収蔵庫部分:地下2階、地上2階)

日本芸術院は美術、文芸、音楽、演劇、舞踊など芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するための国の栄誉機関である。
日本芸術院会館は、故・吉田五十八氏による設計により昭和33年に竣工した。この建物は「平安朝時代の優雅,典麗の雰囲気を主調として,弘仁,藤原の面影 を彷彿させ,さらにこれを近代の時代感覚によって,現代の姿に移行せしめることを意図した。」(吉田五十八)とされている。また、平成15年9月に(社)日本建築学会によって、「日本におけるモダン・ムーブメントの建築100選」に選ばれた、歴史的にも価値の高い建物である。
芸術院の所蔵美術作品を安全に保管し後世に継承していくために、敷地内の美術品収蔵庫の建替えが計画された。会館や庭園、桂垣等の意匠や景観に配慮した、公園と調和する施設が求められた。新収蔵庫は文化財を未来へ継承していく役割を担う、収蔵庫機能に特化した建物である。
そこで、本館である芸術院会館に対して、「背景としての建築」の新収蔵庫を提案した。
南北側の長手の壁面を2枚の屏風を互い違いにしたような意匠とし、太陽高度が低いときは光と影屏風が現れる。面を分割することで、圧迫感を無くしている。
一番大事な景観である講堂からの見え方を、桂垣、椎の木の生垣、屏風壁とレイヤー上に重ね合わせ、奥行き感を演出し、陰影ある表情を持たせた。主人公は芸術院、収蔵庫は背景の建築として品格ある意匠を目指した。
芸術院が壁と庇で構成された、水平を意識した建築であるのに対し、収蔵庫のファザードは壁と袖壁で構成し、縦のラインを意識して対比させ、調和を図っている。そして公園からの景観上、樹木より高くならないよう配慮し、公園側を1層とし、2階部分をセットバックすることで、公園側の圧迫感を軽減している。
収蔵庫という機能的な建物でありながら、芸術院という文化的建築にふさわしい建築を目指し、芸術院本館や上野公園との共生を図っている。